蝋梅が咲いたのを見た
春がもう、すぐそこまで来ている
今年はこんな世の中だから、季節も気を利かせて春を早めに持ってきてくれたらしい
冬が短くて、だけど不安が黒く立ち込めて分厚い雲が出来上がっていた
取り払うすべは誰も知らなくて、ただただ待つことしかできない
そんな冬が終わる
さんかんしおんってなんて素敵な響きだろう
今年ほどこの言葉に救われる年もないだろう
急速に進む春への準備に、てんやわんやで追いかける人たち
でもそれは心から待ち望んでいた希望の花びら
梅が咲いた
向こうのほうに白い花
桜かしらと首を傾げて向かっていくと、それは梅の花であった
強くておてんばで、末っ子のような梅の花
桜を待っている人がいる
あの通りが一面にピンク色になる一週間
散っていく桜を愛でる日本人
あぁ今年ほど桜を望む年もない
蝋梅が消えた
薄い黄色の花びら
蝋でできたように半分透明な可憐な花
初めて見た時の高揚感
蝋梅なんて、そう、ぴったりだわ
2月に黄色は似合わない
それでも蝋梅は春を知らせる
一番先にやってくる
牡丹が萎んだら、彼女たちの出番
自転車が春を連れて来る
光を待ちわびた私の元へ